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2008年10月26日 (日)

「偽善エコロジー」について 2-2 「狂牛病問題」

「偽善エコロジー」
武田邦彦が書いた環境問題ネタの本だ。

武田信彦は、「狂牛病は恐くない、危なくない」と主張する。
これって「エコロジー」の問題じゃないと思うのですが・・・。まいいけど。広義の意味でエコロジーです。

武田邦彦は「狂牛病にかかったウシの肉を食べて、狂牛病にかかった人はいない」と断言している。実験室の中だけでそれを語るのであればそれは正解と言えるのかもしれません。

狂牛病は、「異常プリオン」という特殊なたんぱく質の増加によって起こり、プリオンは主に牛の脳、目玉、脊髄、一部の内臓などに溜まることが解っています。武田邦彦が言うように、例えば牛の「肉」の中には皆無と言ってもいい程に異常プリオンは存在しません。
よって人間は、基本的には狂牛病の牛の「肉」を食べても狂牛病を発症することはありません。

 

しかし、その先を武田邦彦は完全に無視しています。
問題は、食肉業における牛の「解体」の作業に完璧さが無いということです。「人のやることに100%は存在しない」という論理と同じようなものです。そしてこれは想像や憶測ではなく、実際に世界で起こっていることです。

危険なのは実は肉好きの間で人気の「Tボーンステーキ」というもの。
Tボーンステーキとは、「T」型の骨の左右にそれぞれフィレ肉とサーロイン肉の付いた独特の部位のステーキで、1つのステーキで2種類の味を楽しめることが人気です。

さてこの部位、何処の肉なのでしょう。フィレ肉とは腸腰筋のこと。サーロイン肉とは最長筋のこと。それぞれ背骨の周辺にある肉。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~ohkawa/column.html#chouyoukin
では、「Tボーン」とは何処の骨なのか。
引用すべき資料が少ないので英語記事で紹介します。
http://en.wikipedia.org/wiki/T-bone_steak#Anatomy_of_the_T-Bone
『(日本語で要約)屠殺された牛から「Tボーンステーキ」の切り身を取るには、背骨脊髄ごと半分に裂く必要があります。「T」型の骨は背骨を半分に切ったことにより出来たものです。異常プリオンを含む可能性がある「脊髄」の部分は処理の過程で取り除かれます。』

私が見たことのある映像では、脊髄は掃除機のバキュームの様なもので吸い取って処理していました。
問題はこの部分であり、この作業の完璧さに業者毎の確実性や信用度が大きくズレるということです。世界的に業界全体を見ると、脊髄の処理が不完全な場合が多くあるようで、特に「Tボーンステーキ」の場合は骨の周りに「異常プリオン」が付着している可能性が皆無でないことが問題視されています。

この危険性に関してアメリカ政府は、自国の食肉業界を守るために危険性の意識低下を図り、日本を含めた多くの国々に圧力を掛け、「Tボーン」に危険が無いことを主張しています。これにより日本では今も「Tボーンステーキ」を食べることが出来ます。

このことに関して世界ではあらゆる噂が存在します。
「アメリカの競馬場でのTボーンステーキ事件」、「アメリカで異常に若年性アルツハイマーが発生している件」など。
これらの噂の真偽の程は定かではありませんが、事実として「人の狂牛病」である「クロイツフェルト・ヤコブ病」の「変異型」とされる症状はアルツハイマー病として誤診されることが多くあり、これらの噂に真実味を与える結果となっている。

こういった現状を武田邦彦は一切説明しません。
ただ単に「肉は安全だ」と主張するのみ。

 

武田邦彦はこの著書の中で、「たとえ脳や目を食べても、ほとんどの場合は発症しません」、「1000万人を超えるイギリス人が狂牛病に関係した牛を食べたと考えられるが、狂牛病に感染した人は137人でした」と言う。

イギリスには牛の脳を食べる食習慣が一部に存在する。それによりイギリスでは狂牛病にかかる人が存在し国はそれを認知しています。
1000万人って、どういう統計なんでしょうね。
イギリスの総人口は6000万人。
上記の文章を読むと「1000万人が狂牛病の牛の脳を食べた」と理解しやすいかもしれませんが、イギリスの総人口を考慮すると、多分、彼が言っているのは「脳を食べる習慣のある人が1000万人だ」ということなのでしょう。数字の威力を高めようと故意にイメージ誘導を促した文章なのでしょうね。

当然、イギリスの牛の全てが狂牛病であるわけも無く、一番多く発生した1992年の段階で年間数千頭のレベルです。 仮に狂牛病の牛が1万頭発生したとして137人の発症となれば、1.37%です。
これを指して彼は「食べても感染する可能性は非常に低い」とし、「狂牛病は恐くない」と結論付けようとしています。これを指して彼は「メディアの植え付けたイメージによるヒステリックだ」とする。

1%超えの発症率・・・、これって「危険」と言える物なんじゃないですかね。
例えばレストランで毎日100人がそれを食べたとして、そしてそのレストランから毎日1人ずつ狂牛病の感染者が発生するってことですよ。そんなところで食事したい人なんていますか。
武田さん、そういうレストランで毎日昼食でもとってみてくださいよ。

 

彼は、「正常な管理」と、「原因部位の取り除き」によって二重に安全であると言う。
正常な管理というべきは「トレーサビリティ」であり、、また「検査体制」にあるでしょう。
日本においては、完璧な一頭ずつのトレーサビリティが確立しており、また「全頭検査」によって検査体制も万全だ。

しかし、アメリカの現状はどうなのだろうか。
アメリカは「放牧による自然出産」を理由に完全なトレーサビリティを拒否しており、また全頭検査には程遠い、「抜き取り検査」となっている。それも実は「ヘタレ牛を予め排除した段階」での検査であるのが現状で、それが理由でアメリカでは極端に「狂牛病を発症した」とされる牛の数が少ない。そして排除されたヘタレ牛は別の病気の牛と共に闇に葬られてしまう。見た目判断による「ヘタレ牛」の段階では「狂牛病」ではない為、畜産業者は自己の保身のために、その牛を葬り去る。

こんな現状を誰しもが理解しながら、日本政府はそれでも「アメリカ牛は安全だ」として輸入を再開した訳です。
この現状を理解しているがゆえに、みんな牛肉を避けるようになっているわけです。安全か危険かの問題以前に、消費者を馬鹿にしたその体制に対して怒りを感じてのハンガーストライキ的な行動とも言えるでしょう。
輸入再開後も禁止部位が混入するなど、アメリカの食肉業界のトレーサビリティは基本的なところからして皆無な状態がいまだに続いています。基本さえ出来ていないのに、そんな業界のBSE管理を信用できるものでしょうか。

狂牛病の安全云々を言うのであれば、この辺をきっちりと片付けた後に語るべきが正しいでしょう。

 

最後にですね。
珍しく武田邦彦は良いことを言っています。
「できるだけ外国から食料を仕入れない」
ま、それはそうなんですけどね。即ち「食料自給率を上げるべき」と彼は言ってるわけです。でもだから何だと言いたいです。それを主張したことで狂牛病の危険性が否定される訳でもなく・・・。別の主張項目でも作ってそこで言えばいい内容ですね。

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コメント

検証お疲れ様です。
こちらはちょっと、なんだかんだあって沈んでいる状態です。

たとえばの話として、こういう主張をした後に狂牛病の被害が出たとします。……氏がとる行動は、「農水省批判」(苦笑)

「お役所批判」は、便利なツールなようです。いくら言っても、お役所から相手にされることもありませんし、言いたい放題で気楽ですね。

投稿: 綾波シンジ | 2008年10月31日 (金) 08:32

>>綾波シンジさん
どうもお世話様です。
人そぞれあらゆる生活や人生の障害があるものですからね。
私は今週は仕事での円高対応の・・・

これらの著書の読者はあまり狂牛病には興味が無いようですが、これは狂牛病の危険性が日本では今のところ皆無であることが原因なのでしょう。
この文章の影響力が測れないのが心配です。
日本に狂牛病の危険性が再度増した場合、これらの内容はまた物議を醸す可能性があります。そうなる以前に、正しい認識を導きたいものです。
ま、BSE問題が再燃しない社会構造の維持が一番大事ですけどね。

投稿: Snow | 2008年11月 1日 (土) 00:03

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